講師: 村岡 梓 先生(日本女子大学 理学部 数物情報科学科, 教授) 研究室HP
担当:小森田 勝也 (九州大 D2)
担当 連絡先:sec2_at_ymsa.jp
紹介文
半導体における点欠陥や不純物元素は、結晶格子中に必然的に存在し、電気的特性や光学特性など様々な物性に影響します。これらは、太陽電池、光触媒、有機ELなど様々な材料・デバイスの特性に直結するため、例えば点欠陥の形成エネルギーやエネルギー準位についての詳細な理解が重要となります。しかし、そのような情報を実験的に得るのは難しいです。そこで、第一原理計算を用いて、点欠陥に関する各種性質を理解しようとする動きが広まってきています。本分科会では、初めに第一原理計算 (特に密度汎関数法?) によって何が分かるのかを学びます。そして、計算で得られた電子のエネルギーを物質科学的に重要な様々なエネルギー量に変換するにはどうしたらいいのかを学びます。その後に本講義のメインである、「半導体中の点欠陥が生成するかしないか」、「欠陥により生成するエネルギー準位はどの程度か」を計算により予測できるのかについて学びます。最後に、学んだ内容をもとに、これらの知見が新材料の分子設計や応用開発にどのように寄与できるかに関する最新の研究について紹介します。
講義概要(予定)
イントロダクション
第一原理計算 (特に密度汎関数法?) の基礎
第一原理計算で得られる電子のエネルギーと熱力学的エネルギーの関連
Keyword: エンタルピー、エントロピー、ギブスエネルギー、結合エネルギー、格子エネルギー
第一原理計算で得られるエネルギー(Total energy)を実際の解析にと生成エンタルピーの関係。また、エントロピー、ギブスエネルギーの算出。そこから結合エネルギーや格子エネルギーを算出する方法
※第一原理計算を使ったことがない方向けを意識しています。計算で得られる電子のエネルギー (Vaspなどの出力でいうTotal energy)がどのように物質科学的に役に立つエネルギー量に変換されていくのかについてご説明いただきたいです。
欠陥生成エネルギーやエネルギー準位の計算科学
Keyword: 相安定性、欠陥生成エネルギー、エネルギー準位の深さ
半導体や分子の光励起特性の計算科学 (内容が初学者向けになりすぎる場合は入れていただきたいです)
Keyword: TDDFT、光励起、キャリアの生成
村岡先生の研究のご紹介
担当: 小森田 勝也 (九州大学)
第二分科会では、日本女子大学の村岡梓先生をお招きします。村岡先生は、有機結晶や有機分子の電子状態、もしくはそれらの光学特性を計算科学的なアプローチから研究されていらっしゃいます。
近年、有機・無機に関わらず半導体材料は注目を集めています。ペロブスカイト太陽電池は一般的なニュースですら取り上げられるようになりました。半導体中の点欠陥の性質は材料の特性に直結しますが、それらを実験的に得るのは非常に難しいです。本講義ではそのような点欠陥の性質を計算科学的なアプローチから予測できるかという点に焦点を当てた内容となっています。
私自身、普段は実験を中心とした研究を行っており、このような内容は私にとってもチャレンジとなります。「第一原理計算 (量子化学計算) に興味はあるけど、研究にどのように導入したらいいかわからない」という方にも楽しめる内容になっております。参加者の皆様が、この講義を通して、ご自身の研究に新たな可能性を見出してもらえたら幸いです。様々なバックグラウンドを持つ方々と一緒に勉強できることを楽しみにしております。