講師: 宮本 祐樹 先生(岡山大学 異分野基礎科学研究所 量子宇宙研究コア 研究准教授)研究室HP
担当:植木 穂香(奈良先端科学技術大学院大学 D1)
担当連絡先:sec4(at)ymsa.jp
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分子を冷却するためのさまざまな技術は古くから研究されてきました。一方、近年の量子技術の発展により冷却分子系も急速に注目を集め、加速度的に進展しています。まさに「古くて新しい」学問分野と言えるでしょう。量子エレクトロニクスの分野では、分子に先立ち冷却原子系が盛んに研究され、大きな成果を上げてきました。原子のレーザー冷却をはじめとする量子技術の発展により、冷却原子系という高度に制御可能な量子系を手にしたのです。一方で、原子よりも複雑な内部状態を持つ分子は制御が難しく、かつては分子のレーザー冷却は不可能であるとさえ考えられていました。しかし、現在では三原子分子のレーザー冷却およびトラップが実現され、さらに興味深い技術が次々と開発されています。同時に冷却分子系を用いたさまざまな応用も提案されており、冷却原子系を自然に拡張した量子系としての冷却分子系は、現在非常にエキサイティングな段階にあると言えます。
冷却原子・分子系におけるキーワードは、「精密測定」と「精密制御」です。本講義では、まず前提となる冷却原子技術の基礎を概観し、その拡張として最新の冷却分子技術を学びます。後半では、冷却分子を用いた応用について紹介します。
(1):イントロダクション:なぜ分子を冷やしたいのか?
(2):原子冷却の技術:レーザー冷却を中心に
(2ー1):原子と光の相互作用
(2ー2):レーザーによる原子の制御
(2ー3):原子のレーザー冷却
(2ー4):実際の研究例
(3):冷却分子技術
(3ー1):なぜ分子の冷却は難しいのか?
(3ー2):分子レーザー冷却の現実
(3ー3):その他の分子冷却技術
(4):冷却分子を用いた応用
(4ー1):高精度分子分光:何を知ることができるのか?
(4ー2):基礎物理学:標準理論を越えた物理を目指して
(4ー3):量子情報分野:量子素子としての冷却分子
(5):おわりに:これからの冷却分子研究
担当:植木 穂香(奈良先端科学技術大学院大学 D1)
第四分科会では、岡山大学の宮本祐樹先生をお招きし、高い精度での分子の測定および制御を可能にする冷却分子についてお話していただきます。
動く原子の進む方向とは逆向きにレーザー光を照射すると、原子は光を吸収して減速すします。この現象はレーザー冷却と呼ばれており、エネルギー状態を緻密にコントロールすることができるため、量子ビットや量子センシングなどに応用されています。この技術を分子に応用することで、高精度の分光が可能となります。しかし、原子よりも複雑な系である分子の冷却は難しいとされていました。
宮本先生の研究では、バッファーガスを用いて分子を冷却し、精密な状態制御および測定を実現され、高精度分光による詳細な分子の挙動解明に取り組んでおられます。
講義では、原子のレーザー冷却から分子冷却およびその応用、分子冷却が切り開く新たな未来など、基礎から最先端の研究までを学ぶことができます。5日間というわずかな期間ですが、冷却分子が織りなす新たな研究分野を知ってみませんか。バックグラウンドに関係なく、多数のご参加をお待ちしております 。