講師:天野 辰哉 先生(東北大学 理学研究科 超高速分光研究室(岩井研) )研究室HP
担当:木下 裕史(名古屋大学 菱川研究室D1)
担当 連絡先:sec3_at_ymsa.jp
紹介文
光照射によって伝導性や磁性、誘電性など物質の特性が巨視的に変化する「光誘起相転移」の研究については、特に、電子間のクーロン反発によって多彩な物性が発現する「強相関電子系」で数多くの探索がされてきました。しかし、その多彩な物性を特徴づける電子や格子の応答は複雑かつ極めて高速(<< 100 フェムト秒)であり、光励起後のダイナミクスを詳細に解明することは困難でした。一方で、近年のレーザー光源技術の発達は目覚ましく、このような複雑な過程を時間軸上で分離して解明することが期待されています。
本講義では私が専門とする、極短光パルスを用いた超高速光応答の実験的研究について中心にお話します。まず、理解に必要となる基礎知識(光物性物理学/非線形光学)について説明した後、実験に不可欠となる先端光パルス(時間幅数フェムト秒の赤外極短パルス,位相制御パルス,高強度テラヘルツ光など)の発生手法やそれを用いた測定技術(ポンプ‐プローブ分光法,時間領域分光法など)、そして、近年の光誘起相転移や超高速現象に関する研究の展開について解説する予定です。専門外の初学者の方にもわかるように、なるべく簡単に概要を説明しますので、お気軽にご参加ください。
講義概要(予定)
1.基礎知識(光物性物理学/非線形光学) 2.先端光パルス(時間幅数フェムト秒の赤外極短パルス、位相制御パルス、高強度テラヘルツ光など)の発生手法 3.2.を用いた測定技術(ポンプ‐プローブ分光法、時間領域分光法など) 4.近年の光誘起相転移や超高速現象に関する研究の展開
担当:木下 裕史(名古屋大学)
第三分科会では、東北大学の天野辰哉先生をお招きし,極短パルスの発生から,その応用である「強相関電子系における光誘起相転移」をはじめとした超高速現象の観測についてご講義いただきます。
近年の超短パルスレーザーにおける技術の発展はめざましく,数フェムト秒(1フェムト秒=千兆分の一秒)という極短のパルス光を利用することでカメラやオシロスコープでは観測できないほど超高速で進行する現象を「観る」,固体中の電子が感じるクーロン力に匹敵するほどの電場を瞬間的に与えることで材料を「駆動する」,目に見える光から全く異なる周波数をもつパルス光を「生成する」など,数多くが可能にされてきました。
天野先生は,こうした極短パルス光を用いてはじめて観測可能な超高速現象の一つである「光誘起相転移」や,電子間の相互作用を主役として多彩かつ魅力的な物性を示す「強相関電子系」を専門としており,極短パルスレーザーを用いた光物性研究の最前線で活躍されている研究者の一人です。
本分科会では,天野先生の専門を理解するうえで必要な基礎知識だけでなく,実際にこれらの極短パルス光を得る方法,そして得られた極短パルス光が実際にどのように用いられ,どのようなことが明らかになるのかを学ぶことができます。
本分科会を通じて,極短パルス光に関する基礎から最先端の研究まで学び,その理解を深めていただけることを期待しています。